金融業の未来

2017.11.30(THU)

すでに皆さんもご存じのニュースだと思いますが、去る11月13日、みずほフィナンシャルグループはメガバンクとしては異例の人員と店舗の削減を柱とする「構造改革」を発表しました。(10年後に現在の人員7.9万人を6万人まで減らし、店舗も500から400に減らしていくといった内容)

みずほFGでここまで危機感が高まっている理由として、①日銀のマイナス金利政策や人口減少で収益環境が悪化している現状と②フィンテックの普及等で異業種からの新規参入が増加し、今後の競争がさらに激化するという点が挙げられています。

「厳しい現状とさらに厳しい未来」に備え、高コスト体質にメスを入れなければ生き残れないというのが、みずほFGに限らず現在の金融業界の共通認識だと言えるでしょう。

ところで、リーマンショック前の2007年の日経平均高値は18,138円ですが、10年後の2017年11月29日の終値は22,597円。ここにきてリーマン前の水準を上回り、25年ぶりの高値を奪回しています。

しかし金融業の株価は冴えません。前述のみずほFGはリーマン前の高値は一時1,000円を超えていましたが、現在は200円近辺をうろうろしている感じです。実に株価は1/5。銀行だけではありません。証券最大手の野村證券の株価もリーマン前に2,500円を超えていた時期がありましたが、現在は600円台に低迷しています。こちらの株価もざっくりいうと1/5。

一方で直近の10年の社会経済のトレンドをつかみ成長している日本企業の株価は大きく値上がりしています。その代表例としてキーエンスを挙げてみます。同社は主にセンサーの開発・販売で知る人ぞ知る優良企業ですが、昨今のIOTや世界的な省力化の流れに乗っただけでなく、独特の営業モデルを強みにしており、業績は右肩上がりです。株価はリーマンショック前に10,000円くらいでしたが、今年70,000円まで上昇しています。なんと10年で約7倍です。

このように平均値(日経平均)だけで漠然と見るとわかりませんが、過去10年、企業間格差・業種間格差は、とても大きく拡大しているのです。

「これからの10年はどうでしょうか?」

私は過去10年よりも今後の10年の方が、よりドラスティックに変わることを確信しています。リーマンショックから10年後の来年(2018年)、歴史的な視点で見ると私たちは新たな変曲点にいるのだと思います。これからの10年、一般的に人々が思う以上に、社会・経済が変わっていく気がします。

金融業の未来もまさしく大きく変わっているでしょう。みずほFGの10年後を見据えての構造改革。私もみずほFGで3年間働いていたので何となく内情はわかる気もしますし、頑張って欲しい気持ちもある一方、店舗や人員の削減が前面にでる「生き残るための構造改革」では、これからの金融の未来を切り開くことはできないのではと危惧します。

また最近、金融業の未来(イノベーション)が、フィンテックやAIといったテクノロジー中心に語られすぎていることも気になります。

例えば金融商品を買う行為が、電話からパソコンになり、さらにスマホになり、手数料が下がったとしても決して儲かるわけではありません。また何を買うかをAIやロボットに決めてもらっても確実に儲かることも当然ありません。平均的な人間よりはいいかもしれませんが…。

それが本当に人間を豊かにする金融業の未来なのか?本来は人間が為すべきところをAI・テクノロジーを活用することで、単に楽をしようとしているだけではないか?その線引きが間違っているではないか?不確実性を許容するからこそ、未来の成長があるということをAIやロボットはすべて解析できるのか?

そんなことを感じつつ、弊社が今後どのようにお客様に貢献していくべきか?改めてこれからの10年を、年末年始にじっくり考えてみたいと思います。

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