マーケット・レビュー(2017年6月)

2017.07.04(TUE)

早いもので2017年も半分が過ぎました。今年の中間地点において「世の中で何が起き、金融市場がどう動いたか?」ご確認頂くと同時に「ご自身の資産運用、仕事、生活等にどのような影響があるか?」是非考えてみてください!

■2017年6月の注目ニュース(社会・経済)

1日、トランプ米大統領が地球温暖化対策の枠組み「パリ協定」離脱を表明。
2日、異次元緩和で日銀総資産(5月末時点)が500兆円を超える(GDP比93%)。
2日、IT株上昇で世界株式の時価総額が76兆㌦になり、2年ぶりに過去最高更新。
2日、日経平均が1年半ぶりに2万円回復。
2日、米国の5月雇用統計は、前月比13.8万人増(予想18万人)。
4日、トヨタと米電気自動車テスラが提携を解消。今後は強力なライバル関係に。
5日、サウジアラビア等アラブ諸国がカタールと国交断行。
6日、世界半導体販売額は前年比+11.5%。IOTでメモリー、センサー需要拡大。
9日、英国総選挙で与党が敗北。メイ首相が続投表明も影響力の低下が免れない。
9日、ナスダック急落。最近急ピッチで上げてきた反動と短期筋の手じまい売り。
10日、米国の経済成長戦略がロシアゲートの影響で停滞する見通しが相次ぐ。
13日、米ドル実効レートが8ヵ月ぶりの低水準(トランプ大統領以前の水準)。
13日、米ヤフーが消滅(通信大手ベライゾンの買収完了)。日本ヤフーは継続。
14日、米FRBが今年2回目となる0.25%の利上げを実施(1%~1.25%誘導目標)。
14日、米利上げ後に世界株高。長期金利が低位安定し、株式市場に安心感。
14日、FRBイエレン議長は、年3回の利上げを維持する政策シナリオを公表。
16日、日銀は金融緩和の維持を決定(9ヶ月連続)。金融緩和の出口は見えず。
16日、アマゾンが米高級食品ホールフーズ・マーケットを買収。
18日、フランス下院選挙で、マクロン新党が大勝、EUの結束に光明。
20日、ソニーの株価が9年ぶりの高値をつける。ゲーム事業の収益性を評価。
21日、NY原油価格が9ヶ月ぶりの安値。OPECが減産しても、他の国が増産。
23日、英国EU離脱から1年。英国では通貨安、インフレ率上昇など経済に影。
24日、欧州中央銀行(ECB)はイタリアの中小銀行の破綻処理を決定。
26日、エアバックのタカタが民事再生法申請。負債総額1兆円超。
26日、昨年度の対日直接投資は3兆円を突破して過去最高に(シャープの買収等)。
27日、銀行の国債保有は202兆円と過去最低に(5年間で半分に)。
28日、欧州国債利回りが急上昇。金融緩和の縮小の見方強まる(ユーロ高)。
29日、欧州の金利上昇をきっかけに銀行の利ザヤ改善期待から金融株が上昇。
29日、中国の通信機器大手ファーウェイが日本に生産拠点を新設。
29日、ソニー29年ぶりにアナログレコードの自社生産を再開。

■2017年6月の金融市場の動き

【6月末の長期金利】 世界の長期金利は小幅上昇も低位安定。
日本10年国債  0.08% 前月比+0.035% 年初来 +0.035%
米国10年国債  2.30% 前月比+0.1%  年初来 -0.14%
ドイツ10年国債 0.43% 前月比+0.13% 年初来 +0.237%
英国10年国債  1.25% 前月比+0.22%  年初来 +0.01%

【6月末の先進国株式】 概ね堅調も欧州株式と米ナスダックに調整売り。
日本(TOPIX)  1611.90  前月比+2.8% 年初来+6.1%
米国(S&P500)  2423.41  前月比+0.5% 年初来+8.2%
(ナスダック) 6140.42  前月比-0.9% 年初来+14.1%
ドイツ(DAX)  12352.12 前月比-2.3% 年初来+7.4%
英国(FTSE100) 7312.72 前月比-2.8% 年初来+2.4%

【6月末の新興国株式】 概ね横ばい、原油価格に連動するロシア株は軟調。
中国(上海総合)  3192.43  前月比+2.4% 年初来+2.9%
インド(SENSEX) 30921.61 前月比-0.7% 年初来+16.1%
ブラジル(ボベスパ)62899.87 前月比+0.3% 年初来+4.4%
ロシア(RTS)   1000.96  前月比-5.0% 年初来-13.1%

【6月末の商品市況】 原油価格を中心に商品市況は下落。
WTI原油先物(1バレル)46.04ドル 前月比-4.7% 年初来-14.3%
NY金先物(1オンス) 1240.7ドル 前月比-2.5% 年初来+7.9%

【6月末の為替市場】(+は円安 -は円高)年初からの円高圧力弱まる。
米ドル/円  112.48円  前月比+1.6% 年初来-3.8%
ユーロ/円  128.45円  前月比+2.6% 年初来+1.2%
英ポンド/円 146.49円  前月比+2.6% 年初来+1.7%
豪ドル/円  86.73円   前月比+5.7% 年初来-0.4%

■長期投資の視点 「日米欧の金融政策の現在地」

先月、米国FRBが今年2回目の0.25%の利上げを実施し(FFレート誘導目標を年1%~1.25%に)且つ、量的緩和の出口戦略を具体的に検討し始めました。また欧州ECBドラキ総裁もデフレからインフレを意識する発言をし、欧州でも量的緩和の出口が意識されました。一方で日銀は政策決定会合において9カ月連続の金融緩和維持を決定、黒田総裁はデフレに戻るリスクを避けるため、金融緩和の出口はまだ見えていないことを示唆しました。日米欧の中央銀行の金融政策の違いが、大変解りやすく示された2017年6月だったと言えます(為替市場は円安に反応)。

米国では昨年来の金利上昇に伴い、低所得者向けの自動車ローンの焦げ付きが増えるなど、実体経済への悪影響も見え始めていますが、経済全般は概ね良好と言えます。

さて日本においても、これから数年以内に金融緩和の出口を迎えるときが必ず来ます。日銀は過去数年の金融緩和に伴う国債やETFの購入で、今や資産が500兆円を越え、GDPに匹敵する規模に膨れ上がり、その財務内容はFRBやECBよりもリスキーな状態とも言えます。米国のように実体経済への悪影響を極力抑えながら、金融緩和の出口を出ることができるかどうかは相当心配な状況。最近、日本の不動産市況がピークアウトしてきている模様ですが、それは近い将来の金利上昇リスクを意識し始めた動きなのかもしれません。

このように金利の動きは、金融市場だけの問題ではなく、実体経済や個々人の生活に大きく関わってくる重要な問題です。株式より地味な金利や債券市場ですが、これからの動向をしっかりチェックしておく必要があります。

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